マクロプロス事件

作曲: レオシ・ヤナーチェク
台本:レオシ・ヤナーチェク。原作はカレル・チャベックの喜劇。
初演:
19261218日、ブルーノ、国立劇場

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第一幕

プラハにあるコレナティー弁護士の事務所。助手のヴィテクが、最近再開された、100年前の訴訟「グレゴル対プルス」のファイルに目を通している。そこへ当事者の一人、アルベルト・グレゴルがやって来て裁判の進捗状況を尋ねる。ヴィテクは、先生はまだ裁判所から戻っていないと答える。そこへヴィテクの娘で歌手のクリスティーナがやって来て、さっきまで一緒にオペラのリハーサルをしていたエミリア・マルティというソプラノ歌手が、いかに素晴らしかったかを興奮して話す。そこへちょうど戻って来たコレナティー弁護士に案内されて、エミリア本人が姿を現したので、クリスティーナは驚く。エミリアがグレゴルの裁判について尋ねるので、コレナティーがこれまでの経緯を説明した。100年前、後継ぎのないフェルディナンド・ヨゼフ・プルス男爵が遺言を残さずに亡くなった。しかしフェルディナンド・グレゴルという男が、プルス男爵の遺産は自分に口頭で約束されたものだと申し出、それに対して男爵の親戚が異議を唱えているということだ。それを聞いたエミリアは、「フェルディナンド・グレゴルは、プルス男爵とエリアン・マッグレゴルというオペラ歌手の間に生まれた私生児であり、そのことを証明する遺言も存在する」と自信を持って言うので、コレナティーは仰天する。そうなればアルベルト・グレゴルが正当な相続人ということになる。プルス邸内のどこにその書類があるかをエミリアから聞いたコレナティーは、半信半疑で調べに行く。事務所にはエミリアとグレゴルが残った。グレゴルは彼女の魅力に心を奪われ、また相続財産に関して新たな展開が生まれたことに興奮するが、エミリアは彼を子ども扱いしてまるで相手にしない。しかしその後、ギリシャ語で書かれたある書類を手に入れるために、グレゴルの力を借りようとする。それは封印された封筒に入って、遺書と同じ場所にあるはずだと言うが、内容については何も分からない様子だった。コレナティーが、裁判相手である故プルス男爵の親戚、ヤロスラフ・プルスと共に戻って来る。遺言状はエミリアが言った通りの場所から出てきた。しかしプルスは「私生児のフェルディナンドがフェルディナンド・グレゴルと同一人物だということが証明されない限り、アルベルト・グレゴルの勝利とは言えない」と主張する。するとエミリアが、その証拠を持って来ると言う。

 

第二幕

オペラ劇場の舞台の上。舞台係と掃除婦が大成功だったエミリアの舞台の話をしている。プルスがエミリアに会いに来る。息子のヤネクと歌手のクリスティーナもやって来る。エミリアが姿を現すと、その場にいる全員を片っ端から侮辱する。まずは、クリスティーナに恋をしている口下手のヤネクが標的になるが、彼はかえってエミリアにのぼせ上がる。また、後から来たグレゴルが花を差し出すと、身分不相応だと言って恥をかかせる。ヴィテクがエミリアの歌唱力を賞賛し、往年の名歌手ラ・ストラーダに例えると、エミリアは彼女をはじめとする、はるか昔に他界した歌姫たちを酷評する。エミリアが、ヤネクとクリスティーナの関係を冷かしていると、元外交官のハウク=シェンドルフという老人が入って来て、エミリアのことを50年前に別れたジプシーの恋人エウヘーニア・モンテスにそっくりだと言う。さんざん皆を馬鹿にしたエミリアが、なぜかこの少々ぼけた老人には優しくスペイン語で話しかけたり、ニックネームで呼びかけたりした。その後、彼女はプルス以外の全員を追い出す。プルスは、彼が見つけた恋文の主であるエリアン・マッグレゴルについて尋ねた。また、フェルディナンドの出生証明書には、母親の名が「エリーナ・マクロプロス」、本人の名が「フェルディナンド・マクロプロス」と記されており、「フェルディナンド・グレゴル」とは書かれていないと話す。従って、マクロプロス姓を持つ男性の子孫が現れない限り、遺産は自分のものだと言う。エミリアは、プルスが他の書類と共に発見した、封印された封筒を譲ってほしいと頼むが、プルスは断って、意気揚々とその場を去る。グレゴルがやって来て、エミリアに熱い想いを伝える。しかし彼の告白に興味がないエミリアは、疲れて寝込んでしまう。目を覚ますと、同じく彼女に恋い焦がれるヤネク・プルスが立っているので、父親の家から封印された封筒を盗み出して来るよう頼む。しかしその会話を盗み聞いたプルスが出てきて息子を追い払い、自分と一晩を共にしてくれればその書類を渡すとエミリアに約束する

 

第三幕

翌朝、エミリアのホテルの部屋。彼女の冷淡な態度に腹を立てながらもプルスは約束の封印された封筒を渡す。エミリアはそれが本物であることを確認する。そこへメイドが来て、プルスの召使いが彼を探しに来ていると言う。一旦出て行ったプルスはすぐに戻って来て、息子のヤネクがエミリアへの叶わぬ恋に絶望して自殺したと言う。それを聞いても顔色ひとつ変えないエミリアに、プルスは激怒する。そこへハウク=シェンドルフが現れて、彼女をスペインに連れて行こうとする。意外にも彼女は同意する。しかしその時、グレゴル、コレナティー弁護士、クリスティーナがやってくる。彼らと一緒に来た医者がハウク=シェンドルフを連れて帰る。エミリアのサインと「エリアン・マッグレゴル」の署名の筆跡が似通っていることに気づいたコレナティー弁護士は、文書を偽造したのではないか、と詰問する。エミリアはすべてを話すと約束し、着替えのため別室に退く。その間、皆は彼女の持ち物を漁って、様々な偽名が使われてきた証拠の品々を発見する。偽名のイニシャルはどれも「E..」だった。ほろ酔いで戻って来たエミリアは、疲れた果てた様子で真実を語りはじめる。300年以上前、彼女はクレタ島でエリーナ・マクロプロスとして生まれた。父親のヒエロニムス・マクロプロスは、皇帝ルドルフ2世のお抱え医師だった。皇帝はマクロプロスに不老不死の薬を作るよう命令し、薬が完成すると、当時16歳だった医者の娘エリーナを実験台にした。エリーナが昏睡状態に陥ると、父親は詐欺罪で投獄された。しばらくして意識を取り戻したエリーナは、薬の製法を持って逃げた。そしてある時、それをプルス男爵に預けたのだった。薬の効き目は300年間なので、エミリアが生き続けるためにはもう一度その製法を手に入れる必要があった。にわかには信じがたい話だったが、一同は次第に彼女の話は事実に違いないと気づきはじめる。質問攻めに疲れて倒れるエミリア。「人生は長すぎてはいけない。まっとうな長さであってこそ、人生は意味を持つ」と言いながら、今にも息を引き取ろうとしている。最後に薬の製法が書かれた書類をクリスティーナに渡すが、彼女はそれを火にくべる