ビリー・バッド

作曲:ベンジャミン・ブリテン
台本:E・M・フォースター、エリック・クロイズィヤー。原作はハーマン・メルヴィルの小説。
初演:1951年12月1日、ロンドン、ロイヤル・オペラ・ハウス

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プロローグ
年老いたヴィア艦長が海に生きた自分の人生を振り返り、善と悪の割り切れなさを思う。

第一幕
1797年、フランス革命戦争のさなか、英国海軍戦艦〈インドミタブル(無敵号)〉の船上でのできごとである。早朝、乗組員が仕事に取りかかる。人員不足を補うために小艇が航行中の商船に出向き、使えそうな若者を3人徴用してきた。その一人が素直で気立てのよいビリー・バッドだった。衛兵長のジョン・クラガートとの面接で、自分が捨て子であったことを説明しようとしたビリーは、緊張のあまり吃音が出てしまい上手にしゃべれない。先ほどまで乗っていた商船〈ライツ・オ・マン(人権号)〉に向かって高らかに別れの挨拶を叫ぶビリー。それが不穏な言動と勘違いされ、彼は危険分子として目をつけられてしまう。将校たちは、ビリーから目を離さないようクラガートに命じる。一人残ったクラガートは、上官に対する敵意と侮蔑を露わにしながらも、部下のスクィーク伍長には、ことあるごとにビリーを挑発して問題を起こすよう仕向けろと命じる。老水兵ダンスカーは、クラガートに用心するようビリーに忠告する。

ヴィア艦長の部屋。将校たちが集まって、最近イングランドのスピッドヘッドや〈ノア号〉で起きた大規模な海軍の反乱は、フランス革命の悪影響によるものだと、フランス革命の思想に対する不満をぶちまけている。そして、危険分子になりそうな者としてビリーの名前を挙げる。しかしヴィア艦長は、ビリーは若くて威勢が良いだけで、何の問題もない、と将校たちの意見を退ける。

その晩、男たちはバースデッキで船頭歌を歌っている。ビリーは、スクィークが彼の持ち物をひっかき回しているのを見つけて、つかみかかる。クラガートが止めに入り、スクィークがへまをしたことに気づくと、彼を拘束する。ビリーへの憎しみをいっそう募らせたクラガートは、今度は新兵をつかまえて、ビリーが反乱を扇動するよう買収しろと強要する。しかし新兵のその試みはビリーを怒らせただけだった。そこへダンスカーが現れてビリーをなだめ、再びクラガート衛兵長に関わらないよう忠告するが、ビリーはクラガートが自分に悪意を抱いているとは夢にも思っていない。

第二幕 
それから数日後。士官も乗組員も、早く敵と一戦交えたくてうずうずしているが、敵艦は霧に隠れて見えない。クラガートがビリーに関する偽りの嫌疑をヴィア艦長に訴えようとしていたところに、霧が晴れ始めてフランスの戦艦の帆が見えた。艦長が追跡命令を出し、乗組員は戦闘態勢に入った。砲弾が発射されるが、標的を外す。風が凪いで再び霧が濃くなり、追跡は中止された。クラガートは再びヴィア艦長の元へ行き、ビリーが反乱を企んでいると訴える。艦長は彼の言葉を信じないが、ビリーを呼んで、直接、話を聞くことにする。

艦長室で一人になったヴィア艦長。彼はビリーの潔白を信じている。まずビリーが到着し、その後クラガートが来て、再びビリーを告発する。ビリーは弁明をするよう求められたが、このような嫌疑を掛けられたことにショックを受けたため、吃音がひどくなって言葉が出ない。かっとなってクラガートに殴りかかり、殺してしまう。動揺した艦長は将校たちを招集し、略式軍法会議を開いた。ビリーは殺人を犯したことは認めたものの、クラガートが何故自分を告発したのかを説明することができない。将校たちはヴィア艦長に説明を求めるが、艦長は返答を拒んだ。軍法会議はやむなくビリーの死刑を採決する。

夜明け前。ビリーは目前に迫った死について、静かに考える。ダンスカーが食べ物を持って現れ、ビリーの処刑中止を訴える乗組員たちがいよいよ暴動を起こしそうだと話す。しかしビリーは、自分はもう運命を受け入れたから、暴動を止めてくれるようダンスカーに頼む。

夜明け、全乗組員の前で死刑が宣告される。ビリーはヴィアに神の祝福を送り、絞首刑に処される。

エピローグ
年老いたヴィアは、あの時の行動が正しかったかどうか、今でも悩んでいる。自分ならビリーを救うことができたのに……。ビリーが最後に与えてくれた神の祝福を心のよすがとして、ヴィアは生きていた。